2011-10-07

木を切る。

リュウに「木を切るからちょっと手伝ってくれ」と、あいつの実家近くの空き地に呼ばれた。空き地というかちょっとした森みたいな場所。「ちょっとじゃ済まないだろうな」と思った。

指定された時間に森に到着。さあこの森のどの木を切るのかと問うと「全て」と言いおった。さすがにそこまでとは思わなかった。なんでも2ヶ月以内に開拓して美容院を建てるのだと言う。
その開拓するために呼ばれたのが僕とナベとカズキの、一般成人男性と比べても「非力」に分類されるであろう3人。メンツにも期限にも無理がある。

リュウはさっそくチェーンソーを僕に手渡し、何の説明もなく森へと消えて行った。遠くから草刈機の音が聞こえてきた。チェーンソーを持った僕はしばらくそこに立ち尽くした。初めて触るので使い方が分からなかったが、やってみると意外と簡単だった。あれ?これ楽しい。

そして僕も森に入って10分ほど大暴れしたが、大きなバッタが飛んできたので「そうかそうか、この時期はもうバッタが出るんだったな」と思い出して、何も言わず森から出た。そしてそれ以降二度と森には入らなかった。僕はバッタが大嫌いだからだ。リュウが散々僕を罵ったが、それでも入らなかった。入り口付近の木を切るのと、切った木の片付けに徹した。本当は帰ろうとさえ思ったのだが、それはまあ我慢することにした。

3時間後、チェーンソーの切れ味が悪くなってきたのでリュウが適当に替刃を買ってきた。
チェーンソーにもいろんな種類があるので適当に買ってきてはダメだよと注意するのを忘れていた僕たちに非があるのか、それとも34歳にもなってそんなことにも気がつかなかったリュウに非があるのか、どっちか悪いのか分からないのだがとにかく替刃は適合しなかった。

リュウはまたホームセンターに返品しに行って、30分後に手ぶらで戻ってきた。開封しているので返品できないと言われた事に腹を立てて、替刃を投げつけて帰ってきたのだそうだ。
僕たちは「お前が怒ったかどうかは別にどうでもいいから、もう一回行って替刃買ってこい」と命じたが、そこは頑として聞き入れなかったので、僕らはそれ以降の数時間ノコギリで頑張る羽目になった。


つづく