2012-06-30

命の授業

●先週金曜日。新宿でDJしました。
夜中3時くらいまで女の子が一人もいなかった。もう今日は男だけなんじゃないかと思った頃に女の子が2人で来て、今日一番の盛り上がりを見せた。どの曲よりも盛り上がった。

●26日。火曜日。
カズキから「テナガエビ食いたいか?」とメールが来た。「食いたい」と返信したら「じゃあ取りに行くぞ。火曜の夜空けておけ」と返ってきたので、今日は夜から僕とカズキとナベの3人でテナガエビを取りに行った。ちなみに僕はテナガエビがどんなエビなのか知らない。

どこかの港へ向けて出発。車中はカズキとワタナベが本気で口論していた。
「オレは料理が出来る」とウソをつくカズキと「そんなわけないだろ。ずっと実家暮らしのお前が」とワタナベ。こんな程度の内容で30半ばのおっさ んが本気でキレるのもどうかと思うのだが、やたら白熱していた。こんな話題いつ収拾するんだよと少し心配したが、目的地近くになると「このへんだっけ?」 「もうチョイ先だ」と何事もなかったかのように穏やかになった。どこかの港に到着。

で、タモと懐中電灯を使って黙々とテナガエビを取り続けた。テナガエビというのは小指くらいの大きさのエビで、丸ごと素揚げにして食べるらしい。 予想していたよりもはるかに小さい。僕はパエリアやナシゴレンンに入れようと思っていたので「できるだけ大きなものだけを捕らえよ」と二人に命じた。料理 が出来るか出来ないかで本気でキレるような沸点の低い男達が、なぜかものすごく素直に受け入れてくれた。そして次々と捕まえて「これはどうだ?」「まだ小 さいか」と僕に尋ねた。

ちなみに二人はこのエビを食べるつもりはないと言う。
車で1時間以上かけて、釣りをするでもなく、黙々とタモでエビを取る。食べる目的でもなくて、こんな作業の何が楽しくて私を誘ったのかさっぱり理 解できなかった。もちろん二人とも楽しそうにも見えなかった。ただ、ハゼを捕まえた時だけは楽しそうだった。「コレも食うか?」と聞かれたので「食う」と 答えると、そのハゼもエアーポンプの付いたケースの中に入れた。


帰りの車中。二人はまた料理の話で白熱していた。
なぜそんなにキレるのかワタナベに聞いてみたところ「花粉症と同じだ。限界を超えた」と言っていたが、ぜんぜん意味が分からなかった。
みんなで牛丼食って解散。深夜に帰宅。

ケースからハゼだけを取り出した。エビは直前までこのケースの中で活かすとして、ハゼだけは生きてるうちに早くサバいたほうがいいらしい。生きたままの魚をサバくのは初めてだ。そもそも、魚をさばく事さえ今回でまだ2回目なのでどうやっていいのかほとんど分からない。

とりあえずワタナベから「最初に首を落とせば静かになる」と聞いていたので早速落としてみた。いや、落とせない。びちびちしてる。なんか、かわい そう。生きようとしている。手を離すとまな板から落ちてしまうので押さえつつも首が落とせない。ごめんなさいを連呼する私。びちびちするハゼ。勇気を出し て首元を切りつけてみるがなかなか切れない。包丁に体重を乗せるときの気分が最悪だった。なんとか切れたが、ハゼはまだ口をパクパクさせてたし体もびちび ちしてた。うろこを取って、内臓取って、開いて、ラップに包んで冷蔵庫にしまった後も、まだハゼの頭のほうは口をパクパクさせていた。おいワタナベぜんぜ ん静かにならねえじゃねえかばかやろう。
このままでは残酷すぎてこの頭を捨てる勇気がでなくて、しばらくハゼの動きが止まるのを待った。数分待っても止まらなかった。よく考えるとこの時 間もハゼは苦しいかもしれない。もう介錯したほうがいいと思った僕は「ごめんなさい。絶対に美味しく食べます」と声に出しながら頭を二つに切った。

「食べる」という事を考えさせられる出来事だった。